本来無一物

本来無一物

時に極端に、時にふらふら〜と生きている日常を綴ってます。

イノセントデイズ~がっつり感想~

読みました。
まぁー、胸糞悪いと何度思ったことか。
でも惹きつけられて読むことを止めることのできない不思議な魅力を持った物語でした。
人間の本質をまざまざと突き付けた作品です。


ドラマ化されたと同時に本屋で『メディア化』の棚に置いてあったこの本。
なんとなくミステリーそうだな、最近ミステリー読んでないから読んでみるか、あと竹内結子表紙(結構好きな女優さん)という理由で去年買って読まずに放置丸一年以上。
漸く読み始めたら今の私の精神状態では重い重い。
ホラーじゃないのにホラーのような怖さを持った本というのか、夜寝る前には読めない本でした。
気持ちがズドーンと沈んでしまう。
だから朝から日中にかけて読みました(2、3日だったかな)。


田中雪乃の人生を最初客観的に読者は知らされて、それからページを捲る毎に真実を知っていく。
慎一以外雪乃を繋ぎとめようとしてくれる人がどうしていなかったんだろうと思ってしまう。
その慎一だって物語のほぼ終盤からの登場ですでに雪乃の気力が失われてしまった後。
登場人物の中で雪乃がおかしいというよりかは周りが異常で、雪乃自身は普通の人間関係を築ける人間性を持っていたと思う。
それなのに彼女の自己評価の低さと言うか、劣等感、存在価値の低さを感じてしまった生い立ち、人生があまりにも辛いからこそ彼女が異常にならざるを得なかった様を綴られる文章は本当に震える思いで圧巻の一言に尽きる。
こんな人生を歩んでいたら誰だって『生まれてきてごめんなさい』って感情を抱く。
もう少し早く慎一と再会していたら、と思わずにはいられない。
物語を読み進めると人はいかに自分勝手であるかを突き付けられる。
皆が雪乃を都合よく扱って、でもどこかでちゃんと雪乃を必要だって感じていて。
どうしてその一言を誰も伝えてくれなかったんだろう。
どうして手遅れになる前に、どうしてこんなに早く諦めてしまうの。
どうして、がひっきりなしに湧いてしまう。

よく人は軽く『死んだ方がマシ』と言うけど、雪乃の場合本心からの感情で。
なんて救いのない物語だろうって悲しくなった。
でも雪乃本人にしてみれば唯一の救いであったこともまた悲しい。


人間自分の目で見たり聞いたりすることが大切で、大切なことは口に出さないと伝わらない。
胸糞悪い、と思った気持ちと一緒に、この本は忘れられない作品の一つにしたい。

一言で表すなら、面白い作品でした。